会場を一回りして本部に戻ると、スタッフがどら焼きを買って来てくれていた。

「ありがとう。助かったわ。」

「いえ、すぐ買えましたから。私も、このどら焼き、時々、手土産に使うんですよ。関西でしか買えないらしいんです。ネット販売もしていないって。それと次いでに、これも買って来ちゃいました。」

彼女は、美味しそうな一つずつ小分けされたシフォンケーキを見せてくれた。

「これも人気があるんです。是非、広瀬さん達にも食べてもらいたくって。美味しいんですよ。」

「ほんと、美味しそう!ありがとう!後で、おやつに頂いてもいいかなぁ。川口さんにもこれを食べて、元気を出してもらわなきゃ。」

沢田様へどら焼きをお出しするのは、もう少し、後にしよう。
さっき、コーヒーをお出ししたばかりだから。


私は、受付に向かった。きっと、川口さんは落ち込んでいるだろう。

案の定、川口さんは受付ブースの一番端に座って、
ずっと下を向いていた。

現場リーダーが近寄って来て、私の耳元で囁く。

「あれから、ずっとあんな感じで。一応、励ましてはみたものの、私じゃ駄目でした。それに、正直、受付であんな風に落ち込まれてても困るんですよね。」

「そうだよね、ごめんね。一旦、本部に連れて帰るから。後は、お願いしても大丈夫かしら?」

「もう落ち着いてるから、こっちは大丈夫ですよ。スタッフにも順番に休憩も回せてますし。」

「ありがとう。じゃあ、よろしくお願いします。」

私は、川口さんに近付いて声を掛ける。