「ああ、それはお茶の葉を栽培している農家が作った梅のサイダー」
「お茶農家が梅を?」
「取引のあるお茶農家の親戚が梅農家で、梅サイダーを試作したんだって。飲んでもいいよ」
「やったー。飲んでみたい!」
グラスに梅サイダーを注いだ。
「思ってる以上にすっぱいよ」
聡次郎さんはそう言うけれど、梅酒のように少しは甘いのだろうと期待して1口飲んだ。
「すっぱい!」
思わず大きな声が出た。甘みも感じるけれど梅の酸っぱさが強く、ゴクゴクと飲めるものではなかった。
「だから言っただろう。農家もまだ試作段階のものなんだ。俺も飲めないから残ってるんだよ」
眉間にしわを寄せて口の中のすっぱさに耐える私に聡次郎さんは笑った。
「梅なのに全然爽やかじゃない……」
そう言ってからアイディアが閃いた。
「聡次郎さん、急須借ります」
洗ったばかりの急須を食器カゴの中から取り、龍清軒のお茶の葉を入れた。
「何するの?」
「ちょっとアレンジしてみます」
同じく洗ったばかりのマグカップにお茶を半分ほど注ぎ、氷を入れた。その中に梅サイダーを注いだ。
「おいおい!」
聡次郎さんは慌てたけれど私は確信があった。
「日本茶と混ぜたら梅の酸味が残りつつ、口当たりのいい梅茶サイダーになると思うんです」
完成した梅のお茶サイダーを飲んでみた。
酸っぱさが中和されてまろやかになった梅の風味にお茶の渋みが加わって微炭酸のドリンクになった。



