「いただきます」
1番にハンバーグに箸をつけた聡次郎さんを見つめた。
「……うまい」
「本当に?」
「うん。本当にうまい」
味わうように噛みながら微笑む聡次郎さんにほっとした。
「あ、飲み物を忘れていました」
冷蔵庫に入っていたお水でいいかと思ったのだけれど、聡次郎さんが「お茶淹れて」と言った。
「龍清軒でいいですか?」
「食器棚の真ん中の引き出しに他のお茶の葉も入ってるから、梨香が飲みたいものでいいよ」
食器棚の引き出しを開けると龍清軒の他に龍峯で扱っているお茶の葉が未開封の状態で入っていた。
「どれもまだ開いてないよ?」
「自分じゃ淹れて飲まないんだよ。梨香が飲みたいの開けていいから」
そう言われても1度封を切ってしまったお茶の葉は風味が落ちていく一方だ。聡次郎さんのように自宅でお茶を飲まない人にはもったいない。
開封され輪ゴムで留められている龍清軒も賞味期限はまだ持つけれど、いつ開封したものかわからない。
「そうだ、さっき買ったお茶を飲んでみよう」
お茶の雑貨店で買ったお茶の葉を今飲んでみたくなった。
「同じ普通煎茶でも水色は龍峯の商品の方がちょっと濃いかな」
実際に淹れてみた雑貨店のお茶は香りも龍峯のものよりも弱い。



