「聡次郎さんこそ……今日はどういうこと? 仕事とプライベートが完全に混ざってる!」
言ってはいけないとは思っても、1度言葉を発したら止めることは難しい。
「休日も聡次郎さんに合わせて婚約者を演じるなんて聞いてない!」
ここにきて本音が爆発した。お金のためとはいえ貴重な休日に気を遣って過ごすなんてごめんだ。
「悪かったな。休みまで俺につき合わせて」
聡次郎さんは前を向いて運転しながら冷ややかな声を出した。
「でも俺は今日がプライベートだから梨香と会いたいとは言ってないよ。勘違いすんな」
「え?」
「最初に言っただろ。普段の休日はデートする仲睦まじい恋人同士だって思わせなくちゃいけないって」
確かに聡次郎さんは言っていた。
「今日も契約の一部だ。俺の恋人として買い物に付き合ってもらいたいし、お茶の商品を女性に使ってもらって感想を聞きたい。仕事の参考にするからだよ。そういう都合のいい女は梨香しかいない。梨香も契約をした以上は俺に合わせろ」
さっき買い物をする前までの穏やかな声とは違う。冷たい声に膝に置いた手が震えた。
「今日は一切梨香に金は使わせない。全部俺が払う。俺といた時間も時給計算して払うから明人に伝えとく」
「いえそこまでは……」
細かいことまで計算してお金を要求するつもりなんて全くない。そこまでお金に強欲だと思われたくない。
「俺だって梨香と自然な関係を築かないとバレるんだよ」



