アフタヌーンの秘薬


「会計一緒で」

聡次郎さんが店員さんに伝え、ポケットから財布を出した。

「これは私が買いますからいいです!」

私の分まで払おうとする聡次郎さんを慌てて止めた。

「いいよ、買ってやる」

「でも……」

「今日付き合ってくれたお礼」

「ありがとうございます……」

店を出て袋を持ってくれる聡次郎さんにお礼を言った。

「別に。あとでハンドクリームを使った感想聞かせて」

「わかりました」

「次いくよ」

そう言って再び聡次郎さんの手が私の手を包んだ。抵抗する間もなく手を引かれ駐車場まで引っ張られる。
こうして手を繋いで買い物をするなんて本当にデートしているように見えるかもしれない。この関係は一体何なのだろう。

車に乗りシートベルトを締めた聡次郎さんを見つめる私は今きっと不安そうな顔をしているのだろう。
思い切って聞こう。今このタイミングで。

「あの、聡次郎さん……」

「お昼何食べたい?」

「え?」

「和食? 洋食? 中華?」

「えっと……なんでも」

言葉を遮られて食べたいものなんてすぐには言えない。

「なんでもってなんだよ。お腹すいてないの?」

「そういうわけじゃないけど……」

これで終わって帰るのかと思っていた。まさか昼食も一緒に食べるのだとは予想していない。

「じゃあ俺の行きたいところでいい?」

「はい……」

車が走り出し、私は聡次郎さんにこの関係は何なのだと聞く機会を失ってしまった。