アフタヌーンの秘薬


「聡次郎さん、可愛い趣味ですね……」

「そんなんじゃないよ、俺の趣味なわけないだろ」

可愛いと言われて聡次郎さんは慌てたように見えた。

「じゃあ何を買いにきたんですか?」

「入浴グッズ」

「は?」

意外なものに変な声が出た。やっぱり聡次郎さんの好みは可愛いのではと思ってしまう。

「この会社ではお茶を使った入浴剤や石鹸を出してるんだよ」

確かにこの雑貨屋は店舗数こそ少ないけれどお茶を使った商品の知名度は高い。お茶で染めた糸で作られた衣類や日用品を扱っている。私は初めて訪れたけれど店舗の名前だけは知っている。

「飲む以外のお茶の使い方も知っておきたいから。近くにはここしか店がないんだ。ネットじゃ実物がわかりにくいし」

「ああ、そういうこと」

お茶製品のリサーチのためにここに来たということだろう。雑貨屋のサイトでは勉強にならないから1人では入りにくい店舗に私を連れてきた。

「梨香、ついてきて」

聡次郎さんは私の手を引いて店の中に入っていく。ついてきてと言われても、手を引かれていてはついていくしかできないではないか。

全体的にグリーンが目立つ入浴グッズのコーナーは聡次郎さんの目的のお茶石鹸やオイルなど、いずれも女性向けの商品が並んでいる。

「へー、お茶の洗顔なんて初めて見ました」

自然と聡次郎さんから手を放して取った商品はお茶の成分が配合された洗顔料だった。