後続の車のクラクションで我に返ると目の前の信号は既に青になっていた。走り出した車内で無言の状態が続き、しばらく走り続けた車は大型商業ビルの駐車場に入った。
「ここに用事ですか?」
「雑貨屋に寄りたい」
それだけ言うと聡次郎さんは先に車を降りた。車の前から回り込んでシートベルトを外す私の横に立つと助手席のドアを開けてくれた。
「ありがとうございます……」
意外な行動を不審に思いながら車を降りた。
「梨香」
名前を呼ばれつい身構えた。出会ってからの短期間でも聡次郎さんに呼ばれると警戒する癖がついてしまったようだ。
「俺の前でも梨香を笑顔にしてみせるから」
「え?」
言われた言葉を飲み込めずに聞き返した。
「梨香が俺のそばで安心できるように努力する」
聡次郎さんは至近距離で見たことのない真剣な顔を私に向けた。その目が吸い込まれそうなほど綺麗な瞳なことに気がついた。こんなに近くで聡次郎さんの顔をまじまじと見たことなんてなかった。
「あの……」
努力するとはどういう意味ですかと問おうとしたとき、「行くよ」といきなり私の手を握り入り口まで歩きだした。
「え、え?」
前触れもなく手を握られ更に驚いた。
「聡次郎さん、手」
「あ?」
「手!」
私の慌てぶりに聡次郎さんは不機嫌そうな声を出す。
「駐車場は危ないだろ」



