だってお友達なのだから。お兄さんの秘書という以上の親しさを2人からは感じられる。
「あいつが気になる?」
「え?」
「梨香は明人には気安いじゃないか」
「そうですか?」
「表情が違う。明人にはよく笑顔を見せる」
自分では意識していないけれどそうかもしれない。月島さんは聡次郎さんと契約を結ぶ前から知っているのだから他の人とは感覚が違う。
「まあ以前からカフェの常連さんとして顔は知ってましたから。月島さんに気安くなっちゃうのは仕方ないです。慣れない環境で知った人のそばにいたら油断できますし」
「俺のそばじゃ油断できないの?」
そう言われてなんと答えたものか迷ってしまった。聡次郎さんのそばにいて落ち着くなんて嘘でも言えない。何を言われるかとビクビクしてしまうのに。
無言を肯定だと思ったのか聡次郎さんは真っ直ぐ前だけを見てハンドルを握り何も言わなくなってしまった。
これはまずい。聡次郎さんを怒らせてしまった。車という密室で気まずい空気のまま2人で過ごすのは勘弁してほしい。
「すみません……」
考えた末に謝った。
「何で謝るの?」
「あの、聡次郎さんが嫌いなわけじゃないんです。でも月島さんは雰囲気が柔らかいですし、落ち着くというか……」
「俺と明人を比べて明人を褒めてんの?」
「違います! そうじゃなくて……」
うまい言葉がみつからない。月島さんを褒めたいわけでも、聡次郎さんに文句を言いたいわけでもない。



