「日本茶を勉強するならこれが1番わかりやすいから」

「ありがとうございます!」

受け取ったその本は緑色のテキストのようだ。

「日本茶検定を受けるときに勉強する本なの」

「日本茶検定?」

「漢字検定みたいなもののお茶バージョンかな。お茶にもいろいろな資格や検定があって、日本茶インストラクターと日本茶アドバイザーってのもあるのよ」

「へー」

テキストをパラパラとめくった。お茶の淹れ方から栽培方法、健康効果や成分、流通まで書かれている。

「検定を受ける必要はないけど、ここで働くなら最低限の知識は必要かな。これはわかりやすいから読んでみて」

「はい。ありがとうございます」

勉強なんて何年ぶりだろう。お茶は以前ほど未知の世界ではなくなった。けれど厚いテキストに怖じ気ずく。

お茶を何回か淹れるうちにタイマーを使わなくても秒数がわかるようになった。茶碗を持っただけで湯の温度もわかる。

お客様に出すのは龍清軒だけれど、希望した方には他の商品も試飲してもらう。かぶせ茶や玉緑茶なども種類によって少しずつ温度や時間を変えるのだと川田さんから教わった。慣れるとお茶を淹れるのも楽しくなった。

『緑茶』と一括りにしていたけれど製造方法によって味がまるで違う。知れば知るほど日本茶に興味が湧いた。