アフタヌーンの秘薬


「あの……案内をされているということは、私はやっぱりここで働く可能性があるということなんですね?」

「聡次郎ができるだけ抵抗するでしょうが、予想以上に奥様が三宅さんとの結婚を反対されていましたから……それは避けられないかもしれません」

「お母様の嫌がらせ……ですか?」

「そうかもしれません。三宅さんを嫌々龍峯で働かせることで結婚を諦めさせようとしている可能性はあります」

「そうですか……本店で働くのは予想外です」

ここで働くとしたら先代夫人があのような態度では絶対に楽しい空気にはならなそうだ。

「申し訳ありません。あとは社長の判断次第です。奥様が口を出されることも多いですが、最終的には慶一郎さんが決定しますから」

「はい……」

お茶のことなんて分からない。興味もない。だからここで働くことに自信がない。

月島さんに一通り社内を案内された。土曜日ということもあり上のオフィスには社員がほとんどいなかった。部外者である私が社長秘書と社内を歩いていても目立つことはなかった。

エレベーターで15階に行きドアが開くと、目の前には聡次郎さんが立っていた。

「話し合いは終わったよ」

そう言って降りようとする私たちを再びエレベーターの奥に追いやって自分も乗り、16階のボタンを押した。

「奥様と慶一郎さんは?」

「麻衣さんと昼食うって。明人も昼適当に食ってってさ。2時まで休憩だって」

「そうか」

話し合いの結果私はどうなるのだろうと落ち着かないのに、聡次郎さんは呑気に出前は何を取るかという話をして呆れてしまう。

「梨香には悪いけど本店で働いてもらう」

「え!?」