「月島さんもこの会社の方なんですか?」

「兄貴の秘書」

「へー、イメージ通りですね。月島さんって仕事ができそうだし」

秘書なんて月島さんにぴったりな仕事だと思った。
私の言葉に聡次郎さんは呆れるような怒っているような複雑な表情を見せたから、見た目で判断して失礼だったかなと反省した。

「これうちの会社のメイン商品のお茶」

聡次郎さんは湯飲みをテーブルに置いた。

「急須で淹れたのは久々だからうまいかは分かんないけど」

私も急須で淹れたお茶を飲むのは何年振りだろうか。実家にいた頃に母が淹れてくれたのを飲んだのが最後だ。

「いただきます」

湯飲みに入ったお茶は一目で濃いことがわかるほどに濁った緑色だ。湯気も立っているから熱そうだ。
お茶を口に含んだ。思ったとおりお茶は熱く、渋みが口いっぱいに広がった。渋み以外の味をほとんど感じないまま熱い液体を焦って飲み込んでしまった。火傷した舌が痛む。

「おいしいです……」

会社のお茶を出されて感想を言わなければと無難な言葉を伝えたけれど、聡次郎さんは「そうか?」と嬉しくはなさそうな声を出した。

「俺にはお茶の味なんて全くわかんない」

聡次郎さんはズズズと音を立ててお茶を飲むと、湯飲みを揺すってお茶を見つめた。

「ほんと、俺がお茶屋ねぇ……」

その呟きで聡次郎さんは自分の家族の会社なのにお茶に興味がないのだと察した。

「梨香って年いくつ?」

「24です」

「あのカフェには長く勤めてるの?」

「もう4年になります……なるかな」

質問に一々敬語で返してしまう私に聡次郎さんは呆れた顔をするから慌てて言い直す。