お店の外から見た愛華さんは笑顔だった。聡次郎さんだってあの時笑顔を久しぶりに見せた。私以外の女性に。

「会っていきなり重い話はできないだろ。お互いの誤解とか気持ちを話し合って円満に解消できたよ」

そうだったのか。
ほっとしたのと同時に嬉しさが込み上げる。

「なのに家に帰っても梨香はいない。いつまで待っても帰ってこない。ほとんどの服は残ってないし電話にも出ない。本当に焦ったよ」

「ごめんなさい……」

「謝るのは俺の方だ。梨香が不安になってるのは知ってた。でも俺なりに梨香を大事にして、信じてもらってるつもりだった。そのつもりが間違ってた」

聡次郎さんの懺悔に涙を堪えられず頬を伝った。
愛情は感じていた。俺を信じろと言ってくれた。それでも不安に耐えられなくて逃げてしまった弱虫は私だ。

「最近の聡次郎さん、心ここにあらずって感じだったから、愛華さんを好きになったのかと勘違いして……」

「それもごめん。今新店舗の準備で忙しくて疲れもあった。俺は梨香が大切なんだ。会社のためでもない、親のためでもない、俺のために梨香が必要なんだ」

「うん……」

「前に梨香は俺に信じてもらえないことが嫌だと言った。俺だってそうだ。梨香に信じてもらえなかったことがショックだよ」

「ごめんなさい……」

聡次郎さんの言う通りだ。こんなにも大好きなのに、劣等感が邪魔をした。