「情報がどこから漏れるかわかりませんから。次にお会いするときに契約書をご用意いたします」

「情報が漏れるだなんて大げさな……」

「くれぐれもお願い致します」

まるで睨みつけるような月島さんの表情に圧倒され2度も頷いてしまった。整った顔で念を押されたら何も言い返せる気がしない。龍峯さんも何も言わずに、先ほど月島さんが持ってきたメロンソーダを奪いストローで飲み干した。

「それではあいている日がわかりましたらご連絡ください」

「わかりました……」

来週以降のカフェのシフトが出て私の休日がわかったら連絡することになった。

「失礼します……」

龍峯さんと月島さんに軽く頭を下げてファミレスを後にした。ドリンクバーの会計は龍峯さんが払うと言って伝票を私に渡さなかった。

外に出てガラスの向こうの2人を振り返ると、席を向かい合って座り直し何かを言い合っているようだった。

只の会社員が親を納得させるために偽の婚約者を探していた。そして私がその役を演じてあげる。それを誰かに言ってはいけないなんてどうしてかな。何か特別な事情があるということはわかるけれど、いい話のネタになりそうなのに。

今日は変な出来事、変な人たちと出会ってしまった。

月島さんってお客さんとして見てたときは優しそうな人だと思ってたけど、意外と厳しい人なのかな。
また会う口実もできたし、これをきっかけにもっと月島さんと親密になれないかな、なんて能天気なことを考えていた。