濡れた髪をタオルで拭きながら入ってきたその姿に思わず見とれてしまった。何かスポーツをやっていたのではと思えるほど筋肉のついた引き締まった体だ。
裸を見て顔が赤くなる。風邪だからと誤魔化せていればいいのだけれど。
「まだ寝てろよ。俺ももう寝るし」
意識がなくなる前の聡次郎さんとの会話を思い出した。むきになって感情をぶつけてからキスをしたのに、私と違って意識している様子が感じられない。
聡次郎さんは寝室に入るとクローゼットの引き出しを開けた。戻ってくるとTシャツを着ていて、手にはもう一組の着替えを持っていた。
「これに着替えな。それじゃ寝にくいだろ」
今着ているのは仕事着だ。確かにこれではリラックスして寝ることができない。
「あの、もう帰るから……」
「今から? だめに決まってるだろ。もう夜だぞ」
「でもさっきよりは楽になったし」
「いいから着替えろ」
聡次郎さんに着替えを押し付けられ寝室に押し込まれると引き戸を閉められた。
薄暗い寝室で渋々着替え、リビングに戻ると聡次郎さんは電気ポットでお湯を沸かしていた。
「何か食べるか? 麻衣さんがプリン買ってきてくれたんだけど」
「あ、じゃあいただきます」
「飲み物は? スポーツドリンク買ってくるか?」
「お茶が飲みたい」
「は?」
「聡次郎さんの淹れたお茶が飲みたい」
呆れた顔を向けられた。風邪を引いているのに、水でもスポーツドリンクでもなくお茶が飲みたいなんておかしいかもしれない。けれど私はお茶が好きだ。



