絡めた腕に力が入らない。まだ体が熱い。今にも眠ってしまいそうだ。
「どうでもいい人にお弁当作ったりしない」
目頭が熱い。霞んだ目は更に聡次郎さんの姿をぼやかす。
「本当は辞めたくない。お茶の勉強がしたいし、聡次郎さんのそばにいたい!」
呼吸が荒くなる。眠くて目を瞑った。
もうどうにでもなれ。一生このベッドで眠るくらい図々しく迷惑かけてやる。
「梨香」
私の名を呼ぶ声に目を開けたとき、唇に柔らかいものが触れた。聡次郎さんの鼻と私の鼻がぶつかったけれど不快感はない。触れた唇が離れてお互い至近距離で見つめ合った。
もう1度キスしてほしいと思い目を瞑ると、2度目のキスが私の意識を奪った。
目が覚めると部屋の電気は消えて薄暗かった。窓にはカーテンがかけられ、ベッドサイドに置いてあるデジタル時計は23時を過ぎている。
リビングから明かりが漏れているから、聡次郎さんがまだ起きていることはわかった。上半身を起こすとさっきよりは体が楽になっている。
ベッドから下りてリビングに行くと聡次郎さんの姿はない。
「聡次郎さん?」
呼んでみてもどこからも返事がなかった。
ひょっとしてまた仕事に行ってしまったのだろうか。私をここに運んだだけでも時間がかかって大変だったろうに、仕事がまだ途中だったのなら申し訳ない。
廊下に通じるドアが開いて聡次郎さんがリビングに入ってきた。
「あ、起きたの?」
お風呂から出てきた直後であろう聡次郎さんは上半身裸でスウェットを穿いている。



