頭を動かすと、今寝ているベッドは私の家のベッドよりもかなり大きいダブルサイズだろうと思われた。さすがに寝室には入ったことがなかったから、実際に寝てみると羨ましいほど寝心地がいい。
1人暮らしなのにこのベッドのサイズは無駄だ。今の私と同じように聡次郎さんはこのベッドの中央に毎日1人で寝ているとは贅沢だ。
なんとか腕に力を入れて上半身を起こした。頭が重くて再びベッドに倒れそうだ。けれど帰らなければ。これ以上ここにいたらまた聡次郎さんと喧嘩してしまう。
体にかけられた毛布をめくると、自分がまだ龍峯の制服を着ていることに気がついた。
ベッドから下りて立ち上がろうとすると足に力が入らず、そのまま床に勢いよく膝を打ちつけた。上半身はベッドにもたれ掛かる。その音で聡次郎さんは私が起きたことに気がついたのだろう。寝室の引き戸が開いて顔を出した。
「お前何やってるんだよ」
頭上から呆れた声が降ってくる。てっきりバカにしたような顔をしていると思ったのに、その顔は私を心配そうに見つめて駆け寄ってきた。
「寝てろよ」
「でも……」
立ち上がろうとする私の脇に聡次郎さんの腕が忍び込む。膝の裏にも手を入れられそのまま持ち上げられた。
「ちょっと!」
慌てたけれど私を両腕で抱えたまま再びベッドの上に寝かされた。
「大人しく寝てろ」
「帰ります……」
「お前バカか。熱があるんだぞ」
毛布を口が覆うくらいまでかけられたから、めくり返して抵抗した。



