アフタヌーンの秘薬


月島さんの顔を久しぶりに見た。社長秘書である月島さんは社内外を毎日忙しく移動している。今日も相変わらずクールで、銀フレームのメガネがかっこよさを更に引き立たせていた。

「今からお昼ですか?」

「いえ、クリーニングに出していた社長のスーツをお店に受け取りに行くところです。食事はそのあとですね」

「秘書さんはそんなこともするんですね」

「いつもはそこまでしませんが、今日は特別です」

月島さんは優しく笑った。

「月島さんはいつも外食ですか?」

「社長と一緒に外で食べることもありますが、今日社長は麻衣さんとお食事に行っているので、僕は何か買って食堂で食べようかと」

「あの……」

私は遠慮がちにランチバッグから巾着に入ったお弁当箱を出した。

「これ、よければどうぞ……」

聡次郎さんのために作ったお弁当だけれど、何時に戻ってくるかわからないというのだから無駄にはできない。

「お弁当ですか?」

「はい。これでよければ食べてください」

「いえ、それは申し訳ないので」

月島さんは困った顔をしている。私の手作りのお弁当をいきなり勧められても迷惑だったかもしれないと後悔し始めた。

「それは聡次郎のために作ったものですよね?」

月島さんは私が聡次郎さんにお弁当を作っているのを知っているようだ。

「はい。でも聡次郎さんは今日戻ってこれないみたいなので……」

「ああ、現地視察が長引いているのか……」

月島さんは聡次郎さんの行き先を知っているようだ。