「気をつけて。何のための確認なんですか? 個数を間違えて困るのはお客さんなのよ」

「すみません……気をつけます」

頭に角が見えそうなほど顔を歪めて怒る花山さんに思わず身がすくむ。

「花山さん、僕たちが最初に間違えたので……すみません」

商品管理部の男性が花山さんに謝ったけれど、「いいえー、三宅さんには小さいことに気を配って確認する癖をつけてほしいので厳しくしてるんですよー。気にしないでくださいー」と私を叱った声よりも高く甘えるように男性社員に笑いかけた。その姿に先ほどとは違う意味で体が震える。男性社員にだけあからさまに態度が違って気持ち悪い。
聡次郎さんに私は『特別』なのだと仄めかされてから怒鳴ることはしなくなったけれど、敵意は相変わらずむき出しだ。










龍峯が2日間休みのときはその2日間ともカフェに出勤した。本当は1日くらい休みたかったけれど、学生がテスト期間に入るとフリーターは休みを取りにくい。
調子が良くなかった体はますます悪くなり、だるさが際立ってきていた。

お店で筒状の商品の包装の練習をしていたとき事務所から花山さんが勢いよく出てきた。

「三宅さん、先ほど男性のお客様が玄米茶を買いにきましたよね?」

「はい……お買い上げいただきましたけど……」

年配の男性が玄米入り緑茶を会社用にと買っていった。

「7つ買ったのに、レシートは8つ分請求されていると今電話がありました」

「え!?」

「レジの画面を確認しないで打ったんでしょ? 適当なことをされたら困ります」