アフタヌーンの秘薬


「いいよ、俺が送っていくから」

私と月島さんの会話に聡次郎さんが割って入ってきた。

「でも聡次郎は送ってからまた戻ってこなきゃいけないだろ?」

「そうだよ。二度手間になっちゃう」

最後まで聡次郎さんと一緒よりも月島さんに送ってもらえた方が嬉しい。今の気まずい雰囲気のままでいたくない。
2人から遠慮されてしまい聡次郎さんは不機嫌になったようだ。先ほどの笑顔は消えて口はへの字になっている。

「勝手にしろよ」

そう吐き捨てた聡次郎さんはソファーに座ってマンガの続きを読み出した。

「まったく……」

月島さんは呆れた声を出すと「行きましょう」と私に声をかけて玄関に向かった。

「聡次郎さん」

私は声をかけたけれど聡次郎さんは何も言わずマンガに視線を向けたままだ。

「今日はありがとうございました」

「………」

「楽しかったです」

これは本音半分お世辞半分だ。買い物をしてドライブは楽しかった。けれどとても疲れた。
さっきまでの会話の意味を考えると頭がくらくらする。

「お邪魔しました」

玄関で靴を履いても聡次郎さんは見送ってくれることはなく、一言も声が返ってこなかった。





龍峯の駐車場で月島さんの車に乗った。

「今日はすみませんでした。聡次郎のワガママに付き合っていただいて」

「いいえ、食事も奢ってくれましたし、買い物にも付き合っていただきましたから」