「強引にキスまでして……こんなのおかしいですよ……」
勘違いしてしまうじゃないか。だって聡次郎さんを好きになったら、契約が終わった後に残された気持ちは消化できない。そんなの辛すぎる。
辛すぎる? 私、聡次郎さんを好きになることが辛いの?
「もともとこんな契約は現実的じゃないですね。月島さんの言う通りです」
月島さんの名前を出した途端、聡次郎さんは不機嫌な顔になった。
「あいつのことは今関係ないだろ」
低い声に怯えて僅かに体が震えた。聡次郎さんが怒っている理由が分からないけど、私だって怒りたい。
そのとき玄関のチャイムが鳴った。でも聡次郎さんは私を抱いたまま動かない。
「誰か来ましたよ」
「どうせ家の誰かだ。出なくていい」
「だめです……」
聡次郎さんから離れたくて再び肩を押すと、渋々私を解放した。
玄関に行ってドアを開けると目の前には月島さんが立っていた。
「三宅さん、お疲れ様です」
「あ、お疲れ様です……」
「明人? 何しに来たんだよ?」
後ろにいる聡次郎さんは月島さんを見た途端不機嫌な声を隠そうともしない。
「三宅さんがいるって聞いたから。僕はもう帰るから車で送っていこうと思って」
「え、そんな、申し訳ないです」
「実は僕と三宅さんの家は近いんですよ。今日は車なので乗っていきませんか?」
「じゃあお願いします」



