「仕方ないだろ、こういうことは」

いつものヘラヘラ笑ってる顔とは違う、真剣な顔。
軽々と私を背負う背中はなんかお兄ちゃんを思い出させて、ちょっとほっとする。

登山口で待っていた車に乗せられた。
葵ちゃんと明石くんは宿泊施設までまだ歩いて帰るけど、私はここから車だって。

「ほかの子には内緒な」

杉本先生から手渡された、スポーツ飲料のペットボトル。

「ありがとうございます」

「うん」

飲んでる私の隣に、杉本先生が座る。

「よく頑張ったな」

ぽんぽん。

私の頭にふれる、杉本先生の、手。

……悔しい。
今回はちゃんとできると思ってたのに。
「痛いのに、はー食いしばって、ちゃんと歩いて。
偉かったぞ。
見直した」

「……はい」

施設の人が車を出すまで、杉本先生は泣いてる私の手を握ってた。