ちょいちょいと手招きするので傍に行ったら、手を引っ張られた。
そのまま手近な部屋に連れ込まれ、ドアがばたんと閉まった。

「風呂上がりの宮野は、めっちゃそそるなー」

「あの、杉本先生?」

後ろから伸びてきた手が、肩を滑り、胸に降りてくる。
そのままぎゅっと私を抱きしめると、まるでにおいを嗅ぐみたいに、杉本先生は髪に顔をうずめてきた。

「先生?」

ドアを一枚隔てた外は騒がしい生徒の声。
なのに真っ暗な部屋のなかで聞こえるのは、私のうるさい心臓の音と杉本先生の吐息。

……というか。
この体勢はいったいなんですか?

「おまえ、さ。
明日の登山、大丈夫か?
おうちの人が無理させないように、って」

「……大丈夫、ですよ。
ずいぶん体力、ついたので。
お兄ちゃんが心配しすぎなだけです」