……私の記憶はここで途絶えてる。

次に覚えているのは病院で、私に抱きついてお兄ちゃんがわんわん泣いてるとこ。

話では二週間ほど、行方不明だったらしい。
必死になって探しても見つからず、途方に暮れかけたとき。
遠く離れた山奥で、たまたま林業関係者に保護された、って。

私には実感がなかったけれど、確かにいつも観ていたテレビ番組は飛んでた。

しばらくは島津先生のところにかかったりしたものの、失った記憶を取り戻すことはなく、現在に到っている。
 
このあとから親はもちろんだけど、お兄ちゃんは私にすごく、過保護になった。

中高一環の宮薗に入ったのも、おじいちゃんが理事長の誠おじさんと知り合いだったのもあるけど、お兄ちゃんがいたからってのもある。

三つ年上のお兄ちゃんは時間さえあればすぐ中等部に来て、私の世話を焼いていた。

おかげであんまり、友達とかできなかったけど。