「いつものように兄ちゃんが悪くてちょっと喧嘩しただけだろ?
そいでちょっと都合で、杉本先生にしばらく萌花を預かってもらってただけ」

「おにい、ちゃん?」

そっとお兄ちゃんの手が、私の頬を撫でる。

「兄ちゃんが悪かったんだ。
萌花が苦しんでるの知ってるのに、さらに追いつめて。
ごめんな」

ふるふると首を横に振ったら、またぎゅっと抱きしめられた。

「おまえはあやまらなくていい。
悪いのは全部兄ちゃんだ。
俺はもう少しで、今度こそ萌花を失うところだったんだから」

「……お兄ちゃんは悪くないよ」

甘えるようにお兄ちゃんの胸に額をつける。
でも、やっぱりなにかが違う。

……きっと私が、変わってしまったから。

晩ごはんはなにも云ってないのに食べたいと思ってた、お母さんの作ったハンバーグだった。