先生は私を家に帰さずに、自分のアパートに連れて行ってくれた。

「散らかってるけど、気にしないでくれ」

ハンガーラックとフローリングに直に引かれた布団、それにパソコンの載った小さなテーブルしかない殺風景な部屋。
どうやって生活してるのか不思議になるくらい。

「ずいぶん濡れたな。
シャワー、浴びてこい。
暖まるから」

小さく頷いてバスルームに向かう。
洗面台と浴室だけは歯磨きやシャンプーが置いてあって、生活感があった。

熱めのお湯を出して身体にかける。
ザーザーという音はまるで、さっきまでの雨の続きみたい。
でも、……冷たくない。

「着替え、置いとくな」

先生の声に、シャワーを止めた。
出ると、タオルと先生のものなのか、ワイシャツが置いてあった。
袖を通すと、微かに先生の香り。

「悪いな、そんなのしかなくて」

ふるふると首を横に振ると、苦笑いの先生がマグカップを差し出してくる。
受け取ると、コーヒーが入ってた。