「私、……汚れちゃってるんだね」

お兄ちゃんの目が、それ以上開いたら眼球が落ちちゃうんじゃないかってくらい、見開かれた。

「思い出したのか」

「うん。全部」

あの日。

お兄ちゃんに内緒で、ひとりで友達の家に忘れ物を届けに行った日。

私は椛島先生に攫われ、マンションに監禁されて、いっぱい、……いっぱい穢らわしいこと、された。

ずっとずっと忘れてた。
なのに、思い出してしまった。

……椛島先生と再会したから。

「大丈夫か?」

「意外と平気、だよ」

笑ってる私に、お兄ちゃんがぎゅっと抱きついてくる。
震えてるお兄ちゃんの手。

「無理、しなくていいんだぞ」

「……してないよ」

……泣かない私の代わりか、お兄ちゃんが泣いていた。