ばくん、大きく心臓が鼓動した瞬間、目の前が二重に見えた。
にたりと笑ってるいまの椛島先生と、……それよりも幾分若い、やっぱりにたりと笑ってる椛島先生。

「あんなに愛し合ったのに萌花ちゃんは忘れちゃってるみたいで、僕、ショックだったよ」
 
するりと頬を撫でられ、焦点の合わない目で椛島先生の顔を見上げる。
ずきずきと痛むあたま、ままならない呼吸。

「それに、突然いなくなって、ずっと探してたんだよ?」
 
くすり、おかしそうに笑う椛島先生。

知ってる、知ってる、知ってる。

「代わりの子も何人かいたけど、ずっと萌花ちゃんが忘れられなくて」
 
……いや、いや。
思い出させないで。
忘れていさせて。

「高校生なんて興味ないと思ってたけど、やっぱり萌花ちゃんは特別、だね」
 
ちゅっ、唇にふれた柔らかいものに、閉ざされていた記憶が弾ける。

——萌花ちゃん。
——萌花ちゃんがいけないんだよ、こんなに可愛いから。
——ああ、萌花ちゃん、最高だよ。
——萌花ちゃん、僕の可愛い可愛い女の子。
——萌花ちゃん、ずっと一緒だよ。

「あ、あ、あ、あ、ああっー!!!!!!!」
 
壊れる、なにも、かも。