「僕に用……ってわけじゃないですよね」
 
にやにやといやらしい笑みを浮かべると、椛島先生は後ろ手で……鍵を、かけた。

「僕をあきらかに嫌ってる大塚さんが質問なんて珍しいことをするもんだから、もしかしたらって思ったんですよね。
やっぱり当たりだった」

 にやにや、にやにや。

笑いながら椛島先生が近付いてくる。

 どんどん、どんどん。

ドアをたたく、音。

「どうして君は僕の授業、受けてくれないんですか?」

「それは、その」

 どくん、どくん。

大きく響く、自分の心臓の音。
冷えていく指先。
苦しくなっていく呼吸。

「僕はまた会えたって喜んでるのに。
ねえ、……萌花ちゃん」