「……失礼、しまーす」
 
そーっと開けた英語課準備室のドア。
一応、葵ちゃんに椛島先生が職員室にいるのを確認してもらった。
いつものように、椛島先生は女子に囲まれててしばらくは大丈夫、って。

なんでみんな、あんなに椛島先生がいいんだろ。
先生が生徒に向けてる顔は作り物めいてて、裏でなに考えてるのかわからない。

その点については明石くんも葵ちゃんも同意見。

「間谷先生……は、いない、と」
 
今週の英語の課題、置いて帰っていいかな?
質問もあったけど、仕方ない。

椛島先生への提出の課題は、間谷先生が受け取ってくれることになってる。
質問も。
椛島先生と私が少しでも関わらないでいいようにの配慮、だ。

「あれ?宮野さん」
 
ノートを机の上に置き部屋を出ようとしたら、ドアが開いた。

おそるおそる振り返ると、やはり椛島先生がいた。
職員室から出て行こうとしたら、葵ちゃんたちが引き留めてくれるはずだったんだけど……なんで?