帰り道。
葵ちゃんはいつものように腕に抱きつきながら、心配そうに私の顔をのぞき込んだ。

「萌花。
あいつになにされたの?」

「えっと。……」

……手、掴まれて。
撫でられて。
耳も撫でられて、ちゅっ、……。

耳元でした、リップ音が思い出されて、みるみる熱が顔に上っていく。

「まあ、萌花の反応が可愛いから、泣くまで苛めたいっていうのは……ううん。
なんでもない」

……で。
泣いちゃって、ぎゅーっとされて、……明石くんの心臓も、ドキドキしてた。
なんかちょっと落ち着く……とか、思ってない、思ってない。
それで……。

「だいたいさ、あんな奴が私の萌花を泣くまで苛めるとか、許されるとでも思ってるの?」