でも、いまは返事をする余裕がない。

……落ち着いたら。
今度こそちゃんと、明石くんに気持ちを伝えるんだ。

「あ、てめえ、なに萌花にさわってるんだよ!」

それまで黙ってた葵ちゃんだったけど、とうとう我慢の限界にきたのか、明石くんに噛みついた。

「えー?
あたまぽんぽんしただけだど?
それともなに?
こっちのほうがよかったかな?」

明石くんの手が私の背中にまわり、ぎゅっと抱きしめてきた。
微かににおう、整髪料のにおい。
そのにおいをかいだとたんに、心臓がどきどきと鼓動し出す。

「萌花から離れろ!変態!むっつり!!」

「変態とかむっつりとか。
失礼だね、君は」

葵ちゃんが明石くんを私から引き離そうとすればするほど、ぎゅーっと抱きついてくる。

「宮野っていい匂いするんだね」