気がついたらお兄ちゃんがもう会計をすませてた。
抱き抱えられたって今日は文句を云わない。
身体が酷く、だるい。

薬局で処方された薬をもらい、家に帰る。
島津先生のところでお薬をもらうのは、ずいぶん久しぶり。
……あの、誘拐されたとき以来、だ。

「萌花、晩飯……」

部屋に入ってきたお兄ちゃんは、なぜか驚いていた。
傍にくると、そっと指で私の目尻を拭う。

「どうした、泣いたりして。
怖い夢でも見たか」

そっとお兄ちゃんに抱きしめられると、涙がぽろぽろ出てくる。
なにが怖いのかなんてわかんない。
けど、怖くて不安で仕方ない。

結局、ごはんも食べずに薬を飲んで、お兄ちゃんに抱きついたまま眠りに落ちていった。