帰り。
ずっとお兄ちゃんに怒られてた。
でも、私はそれどころじゃなくて。

「聞いてるのか、萌花!?」

「えっ、あ、……うん。
ごめんなさい」

顎を掴まれて強引にお兄ちゃんの方を向かされる。

私にふれる手は……明石くんと全然違う。

明石くんの手はふられただけで、そこが熱を持つようだった。
お兄ちゃんにふれられるのも、杉本先生にふれられるのも嫌じゃない。

けど、……嬉しくなるのは明石くんだけ。

なんでだろ?

「だいたい、あの明石ってなんなんだ?
勝手に萌花を連れ歩いて」

「あっ、えっと、……うん」

……彼氏候補。
明石くんはそう云って笑う、いつも。
もう三ヶ月近く返事を待たせてるのに、嫌な顔はしない。