私の前を歩く、明石くんをちらり。
ほんとは隣を歩きたい。
けど、お兄ちゃんがしっかり私の手を握ってて、無理なんだよね……。

「お兄ちゃん、その、……トイレ、行ってきていいかな」

「ここで待ってるから、ちゃんと戻って来いよ」

「うん」

俺もー、私もーと数人でトイレに向かう。
手を洗って出てくると、明石くんが出口で待ってた。

「このままふたりで消えちゃおうか?」

「えっ、あっ」

少し離れたところにいる、お兄ちゃんを確認する。
お兄ちゃんは葵ちゃんと話してて、こっちには気付いてないみたい。

「どうする?」

意地悪く、明石くんが私の顔をのぞき込んだ。

……お兄ちゃんには悪いけど、明石くんとふたりになりたい。

だから。

「うん。行く」