「……怖かった」

「ん?」

「こわ、かった、よー」

ぼろぼろ涙がこぼれ落ちる。
そっと背中にまわった手は、一瞬、迷ったようにびくりと震えると、ぎゅっと抱きしめてきた。

「ごめんね。
宮野たちだけで行かせるべきじゃなかったね。
気づいて慌てて追ってきたけど、遅くなってごめん」

ふるふると小さくあたまを振ると、抱きしめてる腕にさらに力が入った。

「宮野、明石、大丈夫か!?」

遠くから、杉本先生の声が聞こえてくる。

「残念。
もうちょっとこのままでいたかったけど」

ちゅっ、一瞬だけおでこに柔らかいものがふれて離れる。
次の瞬間にはもう、明石くんは立ち上がってて。

「だいじょーぶでーす。
穏便にお引き取り願いましたー」

さっきとは違う意味で立てなくなってる私を残して、さっさと歩いて行ってしまった。