「とりあえず、宮野からその汚い手、離してもらえるかな?」

「このガキがっ!」

「おっと」

つかみかかろうとした男の手を、明石くんかするりとすり抜ける。
大人相手に、しかも二対一なのに余裕で笑ってる明石くん。

だ、大丈夫なのかな。

「喧嘩ってあんまり好きじゃないんだよねー」

そんなことを云いながらも、するりするりとムキになった男たちを交わしていく。

「大塚ー、杉本先生呼んできてくれるかなー?」

「萌花になんかあったら、ただじゃすまさないからな!」

「大丈夫。……だって」

すぅーっと明石くんの、レンズの奥の瞳が細くなる。
途端に変わる空気。
じっとしていても汗が吹き出るほどの気温だっていうのに……肌寒い。