「おやー、彼女、顔色悪いじゃん。
俺たち車、近くに停めてるからそこで休むー?」

俯いてる私の顔をのぞき込むと、男が肩を抱いてきた。
そのまま歩き出そうとするんだけど、私は一歩も動けない。

「萌花から離れろ!」

「お子さまはお呼びじゃないんだよ」

あざ笑われても葵ちゃんは必死で私を守ろうとしてくれてるのに、肝心の私は恐怖でなにもできない。

怖い、怖いよ。
お兄ちゃん、助けて。

 ガツッ!
 
突然、なにかがぶつかる音がして、私の肩を抱いてた男の手がゆるんだ。

ゴロゴロゴロ、転がっていくペットボトル。

「なにしやがる!?」

男が後頭部を押さえて振り返った。
私も恐る恐る、視線を背後に向ける。
そこに立っていたのは明石くん。

「宮野になに、してるのかなー?」

にっこりと笑った明石くんはぞっとするくらいきれいだった。