誰もいない宿に戻り、顔を洗う。

「あれ?
なんで?
止まんないよ……」

顔を洗っても洗っても、涙は止まらない。
そのうち……洗面台の縁を掴んだままへたり込んだ。

……なんで涙、止まんないんだろ。

胸が痛い。

ずきずき、ずきずき。

いままで味わったことのない痛みに胸を押さえる。

窓の外から聞こえてくるのは、みんなの楽しそうな声。
なのに、すぐ傍から聞こえるのは、自分の口から漏れる嗚咽。

楽しい旅行になるはずだった。
現に、みんなとの溝が埋まって楽しかった。

なのになんで、私はいま、ひとりで泣いてるんだろ……?

「宮野、だいじょーぶかー」