「もえかー、なんか云ったー?」

「ううん、なんでも!」

慌ててあたまを振って自分の云ったことを否定する。

以前にようにかまわれてもきっと、どうしていいんだかわからない。
だって、まだ、はっきり自分の気持ちがわかんないんだから。

明石くんは嫌いじゃない。
でも、これが好きって、恋って気持ちなのかって云われるとよくわからない。

初めての、もやもやした変な感じ。

これがなんなのかわかったら、明石くんに返事をしよう。

「いこ、葵ちゃん」

「萌花、待ってよー」

みんなところに走っていく私に葵ちゃんが慌てて追ってくる。

夏は始まったばかり。
きっと、焦って答えを出す必要はない。