「上村さんのこと。
話してもらえるかな?」

思いっきり笑顔で聞いたら、葵ちゃんの目には涙が溜まり始めてた。

「わ、私だけじゃ、話していいのかわかんないし……」

「いつもみたいに、お兄ちゃんに口止めされてるんだ?」

「わかってるんだったら聞かないでよー」

とうとう泣きだした葵ちゃんに教室中の視線が集中する。
でも、視線が合うとみんなさっと逸らす。

こういうのが嫌なんだって、なんでお兄ちゃんはわかんないのかな。

「ごめんね、葵ちゃん。
今度という今度はお兄ちゃんを問いつめてみるよ」

よしよしとあたまを撫でると、葵ちゃんはまだ、小さくしゃくりあげていた。