「はは。かーわい」
「やめて」
こんなにかわいい彼女を見ることができるのは多分、いや、絶対僕だけだ。
「ごめんね。こんなことばっか言ってたらユリちゃんに嫌われちゃうね」
そう言いながら、ユリちゃんの手を取って歩き出した。
ついさっきまでヤマモトと歩いて枯葉をかけられた道をユリちゃんと進む。
僕の彼女は有名だ。
するどく睨んでいるような目つき。
口角が上がっているところは親しい人しか見たことがないだろう。
近寄りがたい雰囲気はきれいなルックスがさらにそうさせる。
でも、僕は知っている。
照れると耳が赤くなるところ。
電車で赤ちゃんに会うと、こっそり変な顔をして笑わせようとしてるところ。
そのくせ、赤ちゃんに手を振られると、どうしていいのかわからなくなって固まってしまうところ。
僕に向けてくれるやわらかくてあたたかい気持ち。