いろんなことが頭の中を占領して、でもそんなものを全部吹き飛ばしたのは、彼女の笑顔だった。
ホームに人はもう誰もいない、それでも僕はなぜだかそこから動けずにいた。
もう見えない電車が向かった方向をいつまでも眺めていた。
次の日、彼女の教室をおそるおそる覗き、話しかけてくる知り合いをかわしながら、今までないくらいの勇気を振り絞って彼女に声をかけた。
周りの驚きの視線、静まる雑音。
生きた心地がしないっていうのはこのことだと知った瞬間だった。
それから彼女に袖を掴まれ、引っ張られて人通りの少ない階段まで連れてこられた。
気を使わなくても大丈夫だと言ったけど、やっぱりあの視線に耐えるのは堪えたから正直助かった。
階段に腰掛けた彼女に、とっさに着て来ていたカーディガンを脱いでそこに座るように進めた。
もちろん断られたけど、昨日は彼女のカーディガンを奪い、今日は冷たい階段に直接座らせるなんてできなかった。
だけど、それと同時に二人きりという状況にありえないほど緊張していると、渡した学ランにボタンはすぐに綺麗に付けられ返却された。
ありがとうとお礼を言うと、こっちのセリフ。と言いながら、また彼女は笑った。

