「あの、さ」
軽く揺れる車内で、手すりを掴む彼女に正面から向かい合う。
「べつ、いやとかじゃないから」
自分の中でうまく話がまとまらなくて、随分急な話し方になった。
今までお互い黙ったまま電車に揺られていただけだから、僕がいきなり意味のわからないことを言ってるってことだ。
そのことに気づいて、焦って弁解する。
「えぇっと、だからその、ボタンのこと。みんなに見られるのがいやとか、そういうことまったく考えてないから、だから、」
説明下手っ
目の前に立つ彼女は無表情で、何を考えているのかわからないからこわい。
何を言ってるんだこいつは、とか思われてるんだろうか。
いろんなことをぐるぐると考えてると、電車内に僕が降りる駅にもうすぐつくというアナウンスが流れ始めた。
このまま話がうやむやなまま電車を降りても良いのだろうか、いやだめだ。
当たり前だけど、彼女の連絡先なんて知らないし、かと言ってボタンが外れたままの制服を無視できない。
なんたって僕のボタンは彼女の胸ポケットの中に収められてる。

