この時間帯は部活帰りの高校生もまだ電車には乗ってなくて、まわりに学生は僕らしかいない。
別に見られて困るってわけじゃないけど、僕なんかと色々と噂されても高梨さんに申し訳ないしなぁ。
しばらく天井を仰ぎ口を開けて眠るおじさんを見ながら、ぼんやり考え込んでいると、ふと彼女がさっき言った言葉を思い出した。
『誰かに見られるのがいやなら、どこか違うところで待ってるから』
そうか。
ちらりと目の前に立つ彼女を盗み見て、さっき聞き流していた彼女のセリフの意味を理解した。
教室まで行くということを訂正したのは、僕が嫌がってると思ってのことではないだろうか。
彼女は高嶺の花だ。
行動がいちいち目立つ。
彼女に少しでも関わった男は、同じ男からいじり倒されてすぐ噂になって広まる。
いじられた男は初めのうちは名誉だと思うだろうが、いじられつづけることに迷惑がってすぐ 嫌気がさすんだろう。
男は声がでかい。
きっと色々言われてることは、彼女の耳にも入ってるんだろう。
気を、使ってるんだ。

