涼香に呼ばれて涼香のミシンの席に行くと、どうやらミシンの糸が絡まってしまったらしく。
私はそのミシンを直すことに。
「どうやったらこうなる?」
「わからない」
10分を費やして、何とかミシンを復活させた私は、ミシン製造会社に勤めてもやっていけるかもしれない。
結局、縫物を始められたのはいつもと同じくらいの時間になってしまったわけだけど。
それからは3人とも沈黙のまま、ガタンゴトンとミシンの音だけが響いていた。
それから時間が経つにつれて、教室の中が少しずつにぎやかになっていった。
「はよ」
「あ、涼。おはよう」
「え、待って、もうそこまで縫えてる感じ?」
「もちのろん」
「やべっ」
涼はいつも登校時間ぎりぎり。
でも、その割に遅刻をしたこともなければ、縫物の進行具合も大幅に遅れているわけでもない。
ある意味、羨ましい。
時間の使い方がうまいってことだし。
負けていられない。
今こうしてみんなで縫っているのは、今度の学園祭で展示ブースに飾る作品。
それぞれオリジナルでデザイン画を描き、型紙を作り、布を買ってきて縫っている。
私は帽子を作り、涼香はショルダーバッグ、涼はリュックサック。
誰にも作り方を聞くことができない、正解のないこの作業が、すごく楽しい。



