感謝~あなたへ。~


「あんた自分がもう割と完成に近づいてるからって、余裕ぶっこいてるとあとで躓くんだから」

「そんなことねぇよ。俺はやればできる子」

「はいはい・・・真央、どうする?」

「んー、涼のおごりなら喜んで行く!」

「あ、それなら私も!」

「お前ら・・・」

ニヒヒッと二人で笑って、涼はしぶしぶ「まぁいいよ」と返事をして、帰り支度を済ませて教室を出た。

あんまり高いものは無理だからと、ラーメン。

昨日もラーメン食べたのにー、と二人で抗議したものの、涼は「俺は食べてない、文句言うな」とラーメン屋ののれんをくぐった。

唯一の救いは、昨日行ったラーメン屋さんじゃなかったこと。

昨日食べたのは味噌ラーメンだったから、今日は醤油ラーメンにしよう。

あ、唐揚げもつけていいかな、と思っていると、ふと視界に人影が。

「・・・え!」

思わず声が漏れていた。

「真央?」

「どうかしたか?」

「いや、あれって、上野くんじゃない?」

私が見つめている先を二人も見る。

・・・上野くんだ。

こんなところでバイトしてたんだ。

全然知らなかった。

ここのラーメン屋さんは、学校から近いけれど、いつも行きつけにしている昨日のラーメン屋さんがあるから来たことがなかった。

頭にバンダナをして、黒のTシャツにデニムパンツ。

ラーメン屋さんだ。

と、そのとき、上野くんがこっちを向いた。

あっちも私たち3人の存在に、一瞬だけ目をパチッと開き、気まずそうによそを向いた。

厨房の中にいるけど、きっと洗い場の担当なんだと思う。

「上野くんって接客できなさそうだよね」

「静かでまじめな印象強いもんね。そこんとこどうなの、涼」

「俺は別に。あいつ普通にしゃべるよ?」