スーパーヤンキー!!

「へぇー。なかなかやるじゃん。あれ避けられるんだ。でもちょっと残念だなぁ」


「それに、なんだか驚いてもいないみたいだね?こういうのには慣れてるのかな?」


「正面から来る奴なんて久しぶりじゃない?前来た奴は泣いて帰ってたけど」


「……………………」


「今回の奴は手応えありそうじゃねぇか。早くやり合いてぇもんだぜ」


「殺気立つなよ。お前を止めるのは面倒だからな」


「ええー。良いじゃん良いじゃん!あの子の実力も見てみたいじゃん!」


皆俺を無視して勝手にいろいろ話している。俺は地面に刺さったナイフを抜き取り、一度も言葉を発さず、真ん中の椅子に黙って座っている不良にめがけてそのナイフを投げつける。


その不良は軽々と俺の投げたナイフをキャッチした。そしてそれをもう一度俺の方に向けて投げる。


俺は顔を少し左に向けて避けた後、俺を睨めつけているその不良に言い放つ。


「アンタ、この学校のトップだろ?」


それを見ていた周りの奴らは黙る。俺の顔を睨みつけながら。


それでも俺は続ける。


「だよな?浅葱さん?」


俺はわざと満面の笑みを作った。


すると、周りに座っている奴らが口を開く。


「お前さぁ、ちょっとツラ貸せや。てめぇのその綺麗な顔をボッコボコにしてやんぜ」


「えー。それはやだなぁ。男は顔が全てなんだから大事にしないといけないだろー?」


わざとらしく言ってから、俺は少し真面目な顔をする。


「俺さ、アンタ達七人と仲良くなりたいんだよね。だからさ、少し話をしない?」


すると、真ん中に座っている不良以外の六人が腹を抱えて笑う。


「あっははははははは!!」


「ありえねぇ!マジ無理!」


「何それ!バッカじゃないの!?」


「あのさぁ、友達ごっこなら他所でやってくれる?邪魔なんだよね」


「馬鹿だよ!こいつ馬鹿だよ!」


「ちょっとさぁ、誰か病院送りにしてあげなよ。一回体中全部検査してあげなきゃダメなやつだよ」


俺は正直ちょっとムカついた。真面目に聞いてんのに。こういう奴らには一回"本気"っつうのがどういうもんか見せてやんなきゃいけねぇよなぁ。


俺は目を閉じた。まだ笑い声が聞こえるが、周りの音をすべて遮断し、裏の仕事をする時のように心を"無"にする。そして------


目を開く……。


目の前には先程まで大笑いをしていた六人が俺を見て…いや、正確には俺の"顔"を見て固唾を飲むのが分かった。顔には出さないようにしているみたいだが、少しくらいは脅せたみたいだ。まあ、もう少し本気で睨んでやったら怯えてくれるんだろうけど、俺の目的は他にあるからな。


そんな中、真ん中に座っている不良だけは微動だにしない。まだ俺の方をじっと見つめている。睨めつけているというよりは、まるで同類のものを見ているような目をしていた。


そして、やっとその不良は口を開いた。


「……お前、裏を仕切ってる"進藤組"だろ」


俺はもう一度目を閉じていつものように目を開ける。そう。いつものように…


「そうっすよ。でも俺、裏なんて怖くてなんにも出来ないっすよ?」


わざとらしく首を傾げる。


するとその不良は、


「俺はお前がさっき言ったようにこの学校のトップで、名は浅葱 蓮。お前の名は?」


俺は少し考えた。でも無駄だろうなと諦める。


「俺は進藤 龍花。よろしくっす!」


俺は笑顔でそう答えたが、浅葱 蓮は無表情のままだ。そしてまた質問を投げかけてくる。


「お前、裏の仕事には手を出してねぇのか?」


「当たり前じゃないっすか。あんなの怖くて出来ないっすよ!」


「…嘘だな。お前、さっきの目は"そういうの"をやってるやつの目だ。あれは誰でも出来るような目じゃねぇよ」


「……………………」


俺は少し考えた。この七人に分かってもらうにはどうするべきか……どうしよう…考えても駄目だ。何も思いつかない。静かな部屋に少しばかりの緊張感が漂い始める。