「ッチ、ほんとタチわりぃ」
居間に降りてくるなり、郁人が不機嫌に言った。郁人の両端には、まだ葵葉と蒼茉が目を潤ませながらくっついている。
「だから悪かったって。俺はやめとけって言ったんだぜ。でも何かほっとけねぇ話してるし、葵葉と蒼茉も心配そうにしてたからよ」
「ちょっと待てよ!その言い方じゃ俺と颯真が心配してねぇみてぇじゃねぇか!」
「そうだそうだ!俺と瑛凛だって心配してたんだぞ!だからこそあんな無謀な真似をしたんだ!」
「うるせぇな!てめぇら全員同罪だよ!」
「まあそう怒るなよ。皆お前の事心配してたんだ。俺らは長い付き合いだから様子がおかしいとすぐに分かる。その分どうにかしてやりてぇと思うんだよ」
「……分かってる……しょうがねぇから万冬と葵葉と蒼茉は許してやるよ」
俺が言うと、郁人は溜め息をつきながら頷いた。そして葵葉と蒼茉の頭を撫でる。
「いやいや!何か感動的な感じになってるけど俺と颯真はどうなるんだよ!?」
「そうだよ!俺らだって心配だったんだぞ!」
俺は瑛凛と颯真の方をチラリと見たが、話が長くなりそうなので無視する事にした。
「よし、じゃあそろそろ本題に入るぞ」
「ってシカトかよ!」
「ん?何だ?」
「だから俺と颯真はシカトかって言ってんの!」
「……わりぃ。聞こえねぇ」
「……もういいわ」
「そうか。じゃあ話を進める。今日はお前らにこれからの事を言っておこうと思って呼んだ。これから俺がやろうとしている事はお前らにとって辛い事だろう。だから最初に言っておく。俺はお前らが同じ道に進まなくてもずっと家族だと思ってる。それは変わらねぇ。それに、出来れば俺はお前らにこんな事して欲しくねぇと思ってる」
「フッ、馬鹿だなお前。俺はお前についていくぜ」
「そうだぜ。お前がやると決めた事を俺達は否定しねぇし、間違ってるとも思わねぇ。お前がやらせたくなくても俺はやるぜ」
「この瑛凛様がいれば百人力だぞ!」
「俺だって蓮達の役に立てるぞ!」
「……わりぃな……俺は正直、やって欲しくねぇと思ってても、お前ら以外と何かをする気はねぇ」
万冬と郁人と瑛凛と颯真が笑顔で躊躇いなく言ってくれた事にほっとしつつ、笑顔で返す事は出来なかった。俺は真剣な顔で話を続ける。
「じゃあその内容を話す前に、昨日俺が見た頼飛先生のパソコンの中身の内容を話す。パソコンには、たった一言、『白蘭中の生徒を守ってやってくれ』とだけメッセージが残ってた。多分俺らへのメッセージだ。きっとこのメッセージを読ませる為に、俺の靴箱の中にここの家の鍵を入れたんだ」
「守れって……まさかあの事件の事か?」
「ああ。確証はねぇがその事だ。最近じゃ俺らの知らねぇとこでかなりの学生達が殺される被害者側にも、殺す加害者側にもいるらしいからな。特に被害者は多い。始業式の日も俺のクラスは5分の1程度しか来てなかった。その中には一度も学校を休んだ事がない奴もいたから、多分あの事件のせいだ」
「確かに何か欠席多かったよな。桜庭も理由は曖昧に誤魔化してたし」
「ほんと、桜庭は嘘つくのが下手だからなぁ」
「……ああ。そうだったな……」
俺が少し顔を曇らせると、郁人と万冬がハッとして顔を見合わせる。いまいち状況が飲み込めずにいる四人に万冬が昨日の事を話した。
「はぁ!?何で急にそんな事になったんだよ!」
「まさか……瑛凛が桜庭の大事にしてた杏仁豆腐食べたからなんじゃ……」
「え?マジかよ……って、そんな大人がこの世にいんのか!?マジでいんのかよ!」
「いるだろ!現に今ここにいるじゃねぇか!どうしてくれんだよ!土下座並だよ!土下座しろよ!」
「土下座並ってなんだよ!つか誰に謝んだよ!本人ここにいねぇじゃねぇか!てかほんとに俺のせいかよ!」
「だからそうだって言ってんだろ!他に杏仁豆腐食った奴いねぇじゃねぇか!せっかく親父みたいだと思ってたのに!」
瑛凛と颯真が真剣そのものの表情で言い争っているので、俺も万冬も、頭の悪い郁人でさえも、呆れて言葉が出せなかった。そんな俺達の代わりに言ってくれたのは、まだ郁人の腕にしがみついている葵葉と蒼茉だ。
「それは違うと思う。だって桜庭先生はそんな人じゃないし、瑛ちゃんも颯ちゃんも杏仁豆腐勝手に食べるよりもっと酷いことしてた気がする」
「そうだよ。そんな事でいなくなるんだったら、夏休みに瑛ちゃんと颯ちゃんがここで暴れまくったり、BBQの時めちゃくちゃ辛いタレをお肉にかけて桜庭先生に無理矢理食べさせた時点でいなくなってるよ」
「…そ、そうだったのか……」
「…俺達…そんなに酷い事をしてたのか……」
俺も万冬も郁人も、瑛凛と颯真が珍しく反省していることより、葵葉と蒼茉がこんなに周りの事をしっかり見て、自分の思った事をはっきり言ったことに驚いた。俺は幼い葵葉と蒼茉を巻き込んでしまう事に抵抗があったが、葵葉も蒼茉もこれからの事を真剣に考えているのかもしれない。
「……まあ、とりあえず落ち着こうか。朝から何も食ってなくて腹減ってんだ。飯食おうぜ。残りモンだが昨日のカレーがある。皆で食おう」
万冬の提案で、とりあえず話の続きは朝食を食べながらという事になった。俺は葵葉と蒼茉を見る。二人共、俺と目が合うとにっこり笑った。
居間に降りてくるなり、郁人が不機嫌に言った。郁人の両端には、まだ葵葉と蒼茉が目を潤ませながらくっついている。
「だから悪かったって。俺はやめとけって言ったんだぜ。でも何かほっとけねぇ話してるし、葵葉と蒼茉も心配そうにしてたからよ」
「ちょっと待てよ!その言い方じゃ俺と颯真が心配してねぇみてぇじゃねぇか!」
「そうだそうだ!俺と瑛凛だって心配してたんだぞ!だからこそあんな無謀な真似をしたんだ!」
「うるせぇな!てめぇら全員同罪だよ!」
「まあそう怒るなよ。皆お前の事心配してたんだ。俺らは長い付き合いだから様子がおかしいとすぐに分かる。その分どうにかしてやりてぇと思うんだよ」
「……分かってる……しょうがねぇから万冬と葵葉と蒼茉は許してやるよ」
俺が言うと、郁人は溜め息をつきながら頷いた。そして葵葉と蒼茉の頭を撫でる。
「いやいや!何か感動的な感じになってるけど俺と颯真はどうなるんだよ!?」
「そうだよ!俺らだって心配だったんだぞ!」
俺は瑛凛と颯真の方をチラリと見たが、話が長くなりそうなので無視する事にした。
「よし、じゃあそろそろ本題に入るぞ」
「ってシカトかよ!」
「ん?何だ?」
「だから俺と颯真はシカトかって言ってんの!」
「……わりぃ。聞こえねぇ」
「……もういいわ」
「そうか。じゃあ話を進める。今日はお前らにこれからの事を言っておこうと思って呼んだ。これから俺がやろうとしている事はお前らにとって辛い事だろう。だから最初に言っておく。俺はお前らが同じ道に進まなくてもずっと家族だと思ってる。それは変わらねぇ。それに、出来れば俺はお前らにこんな事して欲しくねぇと思ってる」
「フッ、馬鹿だなお前。俺はお前についていくぜ」
「そうだぜ。お前がやると決めた事を俺達は否定しねぇし、間違ってるとも思わねぇ。お前がやらせたくなくても俺はやるぜ」
「この瑛凛様がいれば百人力だぞ!」
「俺だって蓮達の役に立てるぞ!」
「……わりぃな……俺は正直、やって欲しくねぇと思ってても、お前ら以外と何かをする気はねぇ」
万冬と郁人と瑛凛と颯真が笑顔で躊躇いなく言ってくれた事にほっとしつつ、笑顔で返す事は出来なかった。俺は真剣な顔で話を続ける。
「じゃあその内容を話す前に、昨日俺が見た頼飛先生のパソコンの中身の内容を話す。パソコンには、たった一言、『白蘭中の生徒を守ってやってくれ』とだけメッセージが残ってた。多分俺らへのメッセージだ。きっとこのメッセージを読ませる為に、俺の靴箱の中にここの家の鍵を入れたんだ」
「守れって……まさかあの事件の事か?」
「ああ。確証はねぇがその事だ。最近じゃ俺らの知らねぇとこでかなりの学生達が殺される被害者側にも、殺す加害者側にもいるらしいからな。特に被害者は多い。始業式の日も俺のクラスは5分の1程度しか来てなかった。その中には一度も学校を休んだ事がない奴もいたから、多分あの事件のせいだ」
「確かに何か欠席多かったよな。桜庭も理由は曖昧に誤魔化してたし」
「ほんと、桜庭は嘘つくのが下手だからなぁ」
「……ああ。そうだったな……」
俺が少し顔を曇らせると、郁人と万冬がハッとして顔を見合わせる。いまいち状況が飲み込めずにいる四人に万冬が昨日の事を話した。
「はぁ!?何で急にそんな事になったんだよ!」
「まさか……瑛凛が桜庭の大事にしてた杏仁豆腐食べたからなんじゃ……」
「え?マジかよ……って、そんな大人がこの世にいんのか!?マジでいんのかよ!」
「いるだろ!現に今ここにいるじゃねぇか!どうしてくれんだよ!土下座並だよ!土下座しろよ!」
「土下座並ってなんだよ!つか誰に謝んだよ!本人ここにいねぇじゃねぇか!てかほんとに俺のせいかよ!」
「だからそうだって言ってんだろ!他に杏仁豆腐食った奴いねぇじゃねぇか!せっかく親父みたいだと思ってたのに!」
瑛凛と颯真が真剣そのものの表情で言い争っているので、俺も万冬も、頭の悪い郁人でさえも、呆れて言葉が出せなかった。そんな俺達の代わりに言ってくれたのは、まだ郁人の腕にしがみついている葵葉と蒼茉だ。
「それは違うと思う。だって桜庭先生はそんな人じゃないし、瑛ちゃんも颯ちゃんも杏仁豆腐勝手に食べるよりもっと酷いことしてた気がする」
「そうだよ。そんな事でいなくなるんだったら、夏休みに瑛ちゃんと颯ちゃんがここで暴れまくったり、BBQの時めちゃくちゃ辛いタレをお肉にかけて桜庭先生に無理矢理食べさせた時点でいなくなってるよ」
「…そ、そうだったのか……」
「…俺達…そんなに酷い事をしてたのか……」
俺も万冬も郁人も、瑛凛と颯真が珍しく反省していることより、葵葉と蒼茉がこんなに周りの事をしっかり見て、自分の思った事をはっきり言ったことに驚いた。俺は幼い葵葉と蒼茉を巻き込んでしまう事に抵抗があったが、葵葉も蒼茉もこれからの事を真剣に考えているのかもしれない。
「……まあ、とりあえず落ち着こうか。朝から何も食ってなくて腹減ってんだ。飯食おうぜ。残りモンだが昨日のカレーがある。皆で食おう」
万冬の提案で、とりあえず話の続きは朝食を食べながらという事になった。俺は葵葉と蒼茉を見る。二人共、俺と目が合うとにっこり笑った。

