祭りでは、焼きそばやわたがしやりんご、金魚すくいなど、たくさんの屋台が所狭しと並んでいた。郁人と瑛凛と颯真は射的を見ながら目をキラキラさせ、葵葉と蒼茉はたこ焼きやたい焼きなど、食べ物を売っている屋台を見ながら目をキラキラさせている。俺と万冬はそんな五人を見て苦笑するしかない。いや、俺と万冬以上に頼飛先生が困った顔をしていた。
「……やべぇな。葵葉と蒼茉はともかく、残りの三人は今にも飛びついて行きそうな勢いだな」
「どうしますか?頼飛先生。俺と万冬は他の奴に合わせられますけど………」
「分かってる。まあ……大丈夫だろ」
「大丈夫……なのか?」
「グチグチ言っててもしょうがねぇだろうが。おらお前ら!とりあえず俺について来い!」
そういうと頼飛先生は、屋台のある方ではなく、人があまり通っていない道に出る。そしてうるさい郁人達三人を顎でさして、万冬に一万円札を差し出した。
「万冬、すまねぇがこいつらと一緒に回ってくれねぇか?お前ならこいつらまとめられんだろ。俺は蓮達連れて回るから」
「……はぁ。やっぱそうなるよな。ってか、さっきついて来いとか言うからてっきり桜庭が面倒見てやるのかと思ったのによ……でも桜庭じゃ無理か。蓮もこいつら見失いそうだし。ま、いいや。じゃあ帰りはどうする?」
「ハハッ、えらい言い草だな。ま、違わねぇけど。集合はここでいいだろ。時間は……今が18時くらいだから、20時半でどうだ?」
「分かった。じゃあその時間にここでな」
「おお。悪ぃな。楽しんで来いよ」
そういうと、郁人達ははしゃぎながら走り出して行った。万冬が後から追いかける。絶対大変だろうな。俺は正直あんな役したくねぇ。っていうか出来ねぇ。そう思っていると、
「よし。俺らも行くぞ。蓮も葵葉も蒼茉も、食いてぇもんがあったらすぐに言うんだぞ。今日一日は思いっきり楽しめ。いいな?」
頼飛先生が笑顔で言って、先頭に立って歩き出した。俺は葵葉と蒼茉の後ろからついていく。
「あ、俺あれ食べたい」
少し歩いた所で蒼茉が指を指して言う。
「ん?ああ、焼き鳥か。美味そうだなぁ。よし、食うか」
「俺、あれがいい」
「お?焼きそばか。焼きそばも美味そうだなぁ。よし、どんどん食いたいモン食って回るぞ!」
「頼飛先生は何か食べたい物ないんですか?」
「俺はなんでも好きだからお前らの好きなモン食えればいいんだよ。蓮、お前も何か食いたいモンないのか?」
「俺は……あ、あれがいいです」
「んー?え!?お前、あれは水風船だぞ?食えるようなモンじゃねぇぞ?!」
「それくらい分かってます。俺も葵葉達が食べたい物食べれれば嬉しいんで。それに、頼飛先生が祭りに誘ってくれただけでも嬉しいんです」
「ったく、蓮。お前はもう少し欲を出せ。皆に合わせてばっかじゃストレス溜まんぞ」
「大丈夫ですよ」
言いながら、俺達は葵葉達の食べたいと言ったものを片っ端から屋台を見て食べまくった。そして、葵葉と蒼茉が金魚すくいをしている間に、歩き疲れた足を屋台の近くにあった椅子で休ませていると、食べ過ぎて少し気持ち悪そうな頼飛先生が俺に笑顔で話しかけてきた。
「なぁ、蓮。俺はお前らに会って初めて誰かと祭りにきたけどよ、やっぱ楽しいもんだな。自分の子供みてぇに思ってるお前らと美味いもん食ったり、いろんなゲームしてはしゃいだりするのはよ。久しぶりだよ。こんなに楽しく子供みてぇに遊んだのは。初めてお前らに会った時はほんとにめんどくさいガキ共だったが、今じゃこうして家に泊まらせたり、祭りに来たりしてんだから。生きてりゃいい事なんか山ほどあるもんだよな。蓮、お前も俺がお前らと出会えたみたいに、いい奴らと出会える日がきっと来るぜ。だからよ、その日まで一生懸命生きろ。他の六人も一緒に全員で幸せに生きろ。いいな?」
「………どうしたんですか?頼飛先生。何かあったんですか?まさか……何か危険な事を一人でしようとしてるんじゃ……!」
「おい蓮。大丈夫。何も無い。ただ、お前らと祭りに来て改めて思ったからそう言っただけだ。あんまり深く考え過ぎるな」
昔を懐かしむように言う頼飛先生の言葉に、嬉しさよりもゾッとしてしまった俺は、焦って勢いよく立ち上がる。そんな俺の右手首を掴んで動きを制したのは頼飛先生だ。葵葉と蒼茉にも声が聞こえたのか、こちらを見ながら心配そうにしている。俺はゆっくりと椅子に座り直した。
「……す、すみません……。でも、ほんとに何かあるなら俺にも教えて下さい。絶対力になりますから。俺なんかが頼飛先生の役に立てるかは分かりません。でも、一生懸命出来る事をしますから。お願いですから、俺達を頼って下さい……」
「大丈夫。何も起こりはしねぇよ。蓮や郁人や万冬、瑛凛に颯真、それに葵葉と蒼茉。知り合って間もねぇが、お前ら七人は俺にとって息子みてぇなモンだ。そんな大事なモン置いてどこにも行けやしねぇよ。ちゃんと俺が守ってやる」
「違います。俺は、俺以外の皆に何か起こらないかも心配してるけど、今は頼飛先生の事を心配してるんです。俺にとって、初めて信頼出来る唯一の先生なんです。無理はしないで下さい。本当に失いたくないんです」
「……ああ。蓮が俺を心配してくれてんのはいつも見てっからよく分かってる。だがな、俺はお前らと一緒にいて、馬鹿やって、お前らの成長が見られればそれでいいんだ。って、何親みたいな事言ってんだろうな」
頼飛先生は照れくさそうにしながら、俺の頭をくしゃりといつもより少し強く撫でる。そして立ち上がり、葵葉と蒼茉のいる方を親指で指して言った。
「ほら、お前がちゃんとしねぇとあいつら後輩達が不安になっちまうだろ。お前と万冬と郁人。三人で残りの四人を引っ張っていかねぇと、いつ道を間違えちまうか分かんねぇぞ。人の心を変えるのは難しいんだ。俺も蓮と万冬と郁人三人だけでもだいぶ苦労したし、時間もかかっちまった。だから、絶対目の前の大事なもんを見失うんじゃねぇぞ」
俺の頬からつぅっと涙がこぼれ落ちる。どうしてだろう。止まらない。止められない。ただただ立ち尽くして涙を流す俺の頭を自分の胸に引き寄せ、葵葉達から隠すように抱きしめてくれる。それでも俺は涙を止める事が出来なかった。頼飛先生も、そんな俺の頭をただ優しく撫でるだけだ。今の俺には、祭りの華やかな景色も、賑わう人の声も、何も届いてこなかった。
「……やべぇな。葵葉と蒼茉はともかく、残りの三人は今にも飛びついて行きそうな勢いだな」
「どうしますか?頼飛先生。俺と万冬は他の奴に合わせられますけど………」
「分かってる。まあ……大丈夫だろ」
「大丈夫……なのか?」
「グチグチ言っててもしょうがねぇだろうが。おらお前ら!とりあえず俺について来い!」
そういうと頼飛先生は、屋台のある方ではなく、人があまり通っていない道に出る。そしてうるさい郁人達三人を顎でさして、万冬に一万円札を差し出した。
「万冬、すまねぇがこいつらと一緒に回ってくれねぇか?お前ならこいつらまとめられんだろ。俺は蓮達連れて回るから」
「……はぁ。やっぱそうなるよな。ってか、さっきついて来いとか言うからてっきり桜庭が面倒見てやるのかと思ったのによ……でも桜庭じゃ無理か。蓮もこいつら見失いそうだし。ま、いいや。じゃあ帰りはどうする?」
「ハハッ、えらい言い草だな。ま、違わねぇけど。集合はここでいいだろ。時間は……今が18時くらいだから、20時半でどうだ?」
「分かった。じゃあその時間にここでな」
「おお。悪ぃな。楽しんで来いよ」
そういうと、郁人達ははしゃぎながら走り出して行った。万冬が後から追いかける。絶対大変だろうな。俺は正直あんな役したくねぇ。っていうか出来ねぇ。そう思っていると、
「よし。俺らも行くぞ。蓮も葵葉も蒼茉も、食いてぇもんがあったらすぐに言うんだぞ。今日一日は思いっきり楽しめ。いいな?」
頼飛先生が笑顔で言って、先頭に立って歩き出した。俺は葵葉と蒼茉の後ろからついていく。
「あ、俺あれ食べたい」
少し歩いた所で蒼茉が指を指して言う。
「ん?ああ、焼き鳥か。美味そうだなぁ。よし、食うか」
「俺、あれがいい」
「お?焼きそばか。焼きそばも美味そうだなぁ。よし、どんどん食いたいモン食って回るぞ!」
「頼飛先生は何か食べたい物ないんですか?」
「俺はなんでも好きだからお前らの好きなモン食えればいいんだよ。蓮、お前も何か食いたいモンないのか?」
「俺は……あ、あれがいいです」
「んー?え!?お前、あれは水風船だぞ?食えるようなモンじゃねぇぞ?!」
「それくらい分かってます。俺も葵葉達が食べたい物食べれれば嬉しいんで。それに、頼飛先生が祭りに誘ってくれただけでも嬉しいんです」
「ったく、蓮。お前はもう少し欲を出せ。皆に合わせてばっかじゃストレス溜まんぞ」
「大丈夫ですよ」
言いながら、俺達は葵葉達の食べたいと言ったものを片っ端から屋台を見て食べまくった。そして、葵葉と蒼茉が金魚すくいをしている間に、歩き疲れた足を屋台の近くにあった椅子で休ませていると、食べ過ぎて少し気持ち悪そうな頼飛先生が俺に笑顔で話しかけてきた。
「なぁ、蓮。俺はお前らに会って初めて誰かと祭りにきたけどよ、やっぱ楽しいもんだな。自分の子供みてぇに思ってるお前らと美味いもん食ったり、いろんなゲームしてはしゃいだりするのはよ。久しぶりだよ。こんなに楽しく子供みてぇに遊んだのは。初めてお前らに会った時はほんとにめんどくさいガキ共だったが、今じゃこうして家に泊まらせたり、祭りに来たりしてんだから。生きてりゃいい事なんか山ほどあるもんだよな。蓮、お前も俺がお前らと出会えたみたいに、いい奴らと出会える日がきっと来るぜ。だからよ、その日まで一生懸命生きろ。他の六人も一緒に全員で幸せに生きろ。いいな?」
「………どうしたんですか?頼飛先生。何かあったんですか?まさか……何か危険な事を一人でしようとしてるんじゃ……!」
「おい蓮。大丈夫。何も無い。ただ、お前らと祭りに来て改めて思ったからそう言っただけだ。あんまり深く考え過ぎるな」
昔を懐かしむように言う頼飛先生の言葉に、嬉しさよりもゾッとしてしまった俺は、焦って勢いよく立ち上がる。そんな俺の右手首を掴んで動きを制したのは頼飛先生だ。葵葉と蒼茉にも声が聞こえたのか、こちらを見ながら心配そうにしている。俺はゆっくりと椅子に座り直した。
「……す、すみません……。でも、ほんとに何かあるなら俺にも教えて下さい。絶対力になりますから。俺なんかが頼飛先生の役に立てるかは分かりません。でも、一生懸命出来る事をしますから。お願いですから、俺達を頼って下さい……」
「大丈夫。何も起こりはしねぇよ。蓮や郁人や万冬、瑛凛に颯真、それに葵葉と蒼茉。知り合って間もねぇが、お前ら七人は俺にとって息子みてぇなモンだ。そんな大事なモン置いてどこにも行けやしねぇよ。ちゃんと俺が守ってやる」
「違います。俺は、俺以外の皆に何か起こらないかも心配してるけど、今は頼飛先生の事を心配してるんです。俺にとって、初めて信頼出来る唯一の先生なんです。無理はしないで下さい。本当に失いたくないんです」
「……ああ。蓮が俺を心配してくれてんのはいつも見てっからよく分かってる。だがな、俺はお前らと一緒にいて、馬鹿やって、お前らの成長が見られればそれでいいんだ。って、何親みたいな事言ってんだろうな」
頼飛先生は照れくさそうにしながら、俺の頭をくしゃりといつもより少し強く撫でる。そして立ち上がり、葵葉と蒼茉のいる方を親指で指して言った。
「ほら、お前がちゃんとしねぇとあいつら後輩達が不安になっちまうだろ。お前と万冬と郁人。三人で残りの四人を引っ張っていかねぇと、いつ道を間違えちまうか分かんねぇぞ。人の心を変えるのは難しいんだ。俺も蓮と万冬と郁人三人だけでもだいぶ苦労したし、時間もかかっちまった。だから、絶対目の前の大事なもんを見失うんじゃねぇぞ」
俺の頬からつぅっと涙がこぼれ落ちる。どうしてだろう。止まらない。止められない。ただただ立ち尽くして涙を流す俺の頭を自分の胸に引き寄せ、葵葉達から隠すように抱きしめてくれる。それでも俺は涙を止める事が出来なかった。頼飛先生も、そんな俺の頭をただ優しく撫でるだけだ。今の俺には、祭りの華やかな景色も、賑わう人の声も、何も届いてこなかった。

