スーパーヤンキー!!

今朝は、郁人や瑛凛や颯真、三人の寝相が悪いメンバーに囲まれてしまったのが運のつきだった。俺は見事に蹴飛ばされ、痛みと怒りで起きた。


「はぁ………ってぇな……くそ…」


「お、蓮。はよ。郁人達は?」


「まだ寝てる。あいつらの寝相が悪すぎて全然眠れなかった。いい迷惑だ」


「ははは。確かにやばそうだ……」


「葵葉と蒼茉は?」


「ぐっすり寝てるよ。葵葉と蒼茉の寝相も全然悪くないし、なかなか寝心地が良かった」


「俺に対する自慢か?」


「そういうつもりで言ったんじゃねぇよ。お前、葵葉と蒼茉の事気にしてただろ?昨日の事で。だから大丈夫だって言ってんの。あいつらほんとに俺達の前じゃ大人しいからな」


「ああ……悪いな。ありがとう。万冬がいてくれて良かったよ。助かる。俺も、葵葉と蒼茉には、いつか俺達以外の奴とも普通に接してほしいと思ってる。まだまだ葵葉と蒼茉も課題が山積みだ」


「……そうだな」


部屋から出たところで、偶然、同じように隣の部屋から出てきた万冬に会い、話をしながら一緒に居間に向かう。


「おう。蓮と万冬か。やっぱ、お前ら二人は起きてくんの早いな。昨日はよく眠れたのか?」


「ああ。はよ」


「おはようございます、頼飛先生。昨日はぐっすり眠れました。でも、正直郁人達とは違う部屋で寝たかったです」


居間に入ると、既にテーブルでコーヒーを飲んでいた頼飛先生が眠そうにしながら、それでも笑顔を向けて話しかけてくれる。


「はははっ、やっぱあいつら寝相悪かったか。あ、そういや、今日の祭りは夕方から行くからな。それまでは家でゆっくりしてろよ」


「分かりました。ありがとうございます。でも、頼飛先生は何をするんですか?」


「俺はちちょっと部屋でする事がある。だからぜってぇ誰にも近づかせないように、蓮と万冬で見張っててくれよ」


「相変わらず桜庭も忙しいんだな」


「当たり前だろうが。これでも立派な教師だぞ」


「そのようで」


なんだかほっこりする。朝が毎日こんなだったら少しくらいはやる気も出るんだろうか。そんな事を思いながら、俺は軽く笑った。


14時35分。郁人と瑛凛と颯真がだらだらと愚痴をこぼしながら居間に入って来た。


「ったく!何でこんなに暑いんだよ!昼間っから汗だくじゃねぇか!」


「せっかくの休みだってのに、全然眠れなかったわ!このイライラをどうしてくれる!」


「マジあちぃ。アイス食いてぇ。ってか腹減ったー。誰かなんか食いもんくれ」


「おいおい、この時間まで寝てた奴らが何言ってんだよ。夏なんだから暑いのも当たり前。昼までずっと寝てたんなら腹が減るのも当たり前だろ。っていうか、お前らより年下の葵葉と蒼茉が早く起きて飯作るの手伝ってくれてんだぞ。いいかげんお前らも葵葉と蒼茉を見習え」


「おい万冬。これでも俺はいつもより早く起きてんだよ。休みくらいもっと寝かせろ。それに、葵葉と蒼茉はよく出来た子なんだよ。俺達よりもよく出来ちゃった子なんだよ」


「じゃあ寝てろよ。俺達は別に起こしてねぇし。てか起こさねぇし。それに、郁人と葵葉達を一緒にした覚えはねぇよ」


「おいおい、葵葉と蒼茉は俺に似たからいい子なんだよ。それに、これ以上寝ちまったら俺の美顔を誰かに拝まれるかもしれないだろうが。そんなんぜってぇ嫌だぜ。俺は」


「……はぁ。何言ってんだお前は。葵葉と蒼茉は郁人とは正反対だからいい子なんだよ。郁人と似てないからいい子なんだよ。いいかげん無駄話はいいからさっさと顔洗って目覚ませ」


万冬が郁人に呆れたような表情を向けて、同時に瑛凛や颯真の顔も見ながら言った。三人共ボサボサの頭をふらふらと動かし眠そうにしていたが、まだおぼつかない足を重たそうに動かして洗面台に向かう。


「そういや、桜庭はどうしたんだよ?」


顔を洗って目が覚めたであろう郁人が、居間に戻ってくるなり聞いてくる。


「今は二階の自室で仕事中だ。だから絶対邪魔すんなよ。特に郁人と瑛凛と颯真。いいな?」


「へぇー。仕事ねぇー」


「郁人。絶対邪魔するな」


「…ちっ。分かってるよ。蓮はほんと、頼飛先生好きだよなー。っていうか、蓮は冗談っつーもんを学ばねぇとこれからやってけねぇぞ」


俺は、二階を見ながらニヤニヤしていた郁人に釘をさすと、郁人は少しむすっとして俺の方を見た。


「おい郁人。そんな事よりさっさと飯食えよ。瑛凛と颯真はもう食ってんぞ。なくなっても文句言えねぇからな」


「何!?年上の俺を無視して先に食ってやがんのか!?おい!瑛凛!颯真!お前ら少しは先輩に敬意ってもんがねぇのか!勝手に食いやがって!」


「いやぁ、気づかなかったなー。俺の腹の音しか聞こえなかったなー。」


「飯の匂いしか分からなかったなー。飯に勝る者なしだなー。先輩なんて知らないなー」


「この野郎!二人揃って誤魔化してんじゃねぇよ!おい!俺の分はちゃんとあるんだろうな!?なかったら承知しねぇからな!」


「三人共飯くらい黙って食え!うるせぇな!」


ぎゃあぎゃあ喚く郁人達に万冬が怒鳴る。俺はなるべく関わらないように、ソファーでくつろいでいる葵葉と蒼茉に声をかけた。


「葵葉、蒼茉。一緒にテレビゲームしねぇか?」


「うん。やる」


「何のゲームする?」


退屈そうにしていた葵葉と蒼茉だったが、俺がゲームに誘った瞬間、目をキラキラさせて、葵葉がテレビをつけ、蒼茉がゲームのカセットをいじりながら何をしようか悩んでいる。葵葉と蒼茉を見ているだけでもなんだか和む。二人共男だけど、元々可愛い顔してるからなぁ。大きくなったらどんな顔になるんだろうか。そんな事を考えていると、


「じゃあ、万冬も入れて四人でゾンビゲームしようよ。どのステージまで行けるかやろう」


「お、いいな。蒼茉はゾンビゲーム好きだもんな」


「俺も好きだよ。この前なんか、一人で最後のステージまで行ったんだ」


「おお、やるな。葵葉もゾンビゲームになるとめちゃくちゃ本気だもんな」


いつも以上に明るい葵葉と蒼茉を見ると、俺は安心して少し溜息を漏らしてしまった。だが、運良く誰にも聞かれてはいない。なるべく心配されるような事をしないように務めて、俺はテレビゲームに向き合った。